2009年12月18日

漂泊

 わたしは深い海の底にいる。体育座りで膝を抱え、両足の間に顔を埋めている。髪の毛を海草のようにゆらゆらと漂わせて、自分を地面に繋ぎとめるものは何なのかを考える。考え出すと足枷が見えるようになった。黒色でコーティングされた鉄製の輪が右の足首に。それには鎖が付いていて、重たそうな鉄球が先にある。ああこれが私を繋ぎとめるものなのか、何とか外せないものか、そう考えると今度は大きな鋏が現れる。両手で持ち上げ刃先を鎖に当て、えいっという掛け声とともに断ち切ると足枷は見えなくなった。しかしそれでもわたしは海の底から出ることができない。これでもない。考える。現れる。消える。考える。現れる。消える。幾度とない繰り返しの後に、考えることを辞めたらわたしは浮かぶことができるだろうかと考える。わたしが現れる。そうかわたしだったのか。


posted by sakana at 12:50| Comment(0) | 500文字の心臓 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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