2009年07月13日

ワイン




 そしてユキヲは目を覚まさない。



fin


posted by sakana at 15:15| Comment(0) | ミルク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月30日

竹輪

 竹輪の穴から未来を見る。竹輪は長ければ長いほど、遠くの未来が見えるというのは有名な話。けれど竹輪はとても柔らかいのであまり長い竹輪では曲がってしまって穴の先が覗けない。
 あるとき竹輪職人のサヤネさんがとても長い竹輪を完成させた。竹輪界にその人ありとまで言われる彼女の竹輪は、程よく硬く真っ直ぐで、これなら明後日くらい先の未来まで届くはずだと誰もが興味深々だった。
 ユキヲがこれを覗くと、なにも見えなかった。誰が見ても何も見えないようだった。そうなるとみんな我慢できずに竹輪を食べてしまう。次々に頬張って、みんな蕩けるような笑顔になった。
 そこでユキヲは気付いた。こんなにも美味しい竹輪が明後日まで残っているはずがないってことに。
posted by sakana at 12:54| Comment(0) | ミルク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月25日

夕立

 突然降り出した雨の所為で、慌ててユキヲは軒先に退避した。夕立はいつも突然やってきては、唐突に去っていく。それは軒先とユキヲの関係にも言える。
 軒先はユキヲに問う。雨は嫌いか。
 ユキヲは笑って答える。嫌いじゃないよ。
 そうだろう。では濡れて帰るか。
 折角だからお喋りしようよ。
 何だか面白そうだと、そこに夕立まで加わるものだから、この雨はしばらく止みそうにない。
posted by sakana at 16:52| Comment(0) | ミルク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月24日

 とろとろに崩れたお米たちが上げる湯気の多さに、ユキヲは目を瞑ってしまう。それを見たお米たちは、素早く形を変えていく。
 春の桜になって頬を染め、夏の花火になって発光し、秋の落葉になって燃え尽き、冬の雪になって白く戻る。
 すべては再び目が開くまでの幻想だけれど、何故か冷たいお粥の食感にユキヲは首を捻っている。
posted by sakana at 13:17| Comment(0) | ミルク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月23日

羽化

 蛹から脱皮したばかりだというのに虹色蝶々のサユリは少し憂鬱そうだった。羽根はまだ白っぽく濡れている。ユキヲはちょっと気になって立ち止まると、それを合図のようにまたため息がひとつこぼれた。
「ねえユキヲ。私は終わるわ」
 言っている意味がわからなくて、ユキヲは首を傾げるだけだった。
 物憂げな顔でサユリは続ける。「卵から孵ったとき私は幸せだった。葉を食べながらいつか生える背中の羽根のことを夢想して一度死んだわ。そして羽根を得てまた生まれた。でもね。今はもう次の自分を想像できないの。私は終わるわ」
 羽根が乾いた。
「じゃあ行くね」
 ユキヲは思う。葉に張り付いた卵、幹を登る芋虫、空を舞う蝶。段々と空を目指したその後は本当に死ぬだけなのだろうか。
 桃色蜘蛛が笑った。
posted by sakana at 16:25| Comment(0) | ミルク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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